世の中にはキンコーズ(kinko's)やアクセア(accea)といった、コピーや製本、DTPサービスなどを展開しているビジネスコンビニが存在しています。
不思議と24時間営業のところが多いですが、では深夜にお店をのぞいてみると、客はほとんどいません。
24時間営業である理由
なぜ客もいないのに、24時間営業しているのか?
そしてなぜ24時間営業していてつぶれないのか?
という疑問が出てくるのですが、この辺りの原理は「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」(山田真哉 著/光文社新書)と似ています。
法人客がメイン
実は、ビジネスコンビニは、店頭での個人客からもらう仕事(B to C)がメインなのではなく(個人客はむしろ赤字)、法人顧客が主なターゲットなのです。
ビジネスコンビニには、店舗での来客でもたらされる仕事以外にも、店舗所属の外回り営業マンが外回りで集めてきた法人客からの仕事(B to B)があります。
昼間、営業マンが外回りで集めた法人からのオーダーを、夜の時間帯も使ってコピー機その他店舗の機器をフル稼働させて仕上げ、翌日に法人顧客の元へ配達する。
だから1店舗につき、営業社員が1~3名は勤務しており、店舗の近くの駐車場には、そのビジネスコンビニのロゴが入ったバンタイプの配達&営業車を見つけることができるでしょう。
法人系はこんな仕事が多い
- DTP・・・名刺やポスター制作など
- ハレパネ・・・展示会や会議などに使用する大型サイズのボード。
- ラミネート・・・小さいサイズからポスター他巨大サイズのラミネート(簡易看板用など)
- 製本・・・自費出版的な糊付け製本やリングファイル製本など。
- 大量のプリントアウト・・・会議やプレゼンで使うものなどを冊子状にしたり。大手メーカーなどの製品説明書などに、誤字・間違いが発見された場合に、同封する訂正謝罪文(よく説明書に挟まっている小さな紙きれ)など・・・(緊急)。
- 大量のコピー・・・大手外資系企業などが不動産を売買する際などに必要な図面(A1サイズ)から土地や会社謄本、抵当権などB5,B4その他ありとあらゆる不定形サイズの書類を、ホッチキスを外してもどしながら、すべてA4サイズに統一してドッチファイルにまとめる。たくさんある物件を会議参加者数分コピーを作るので、結果としてダンボール何十箱分にもなって顧客の元へ配達することになる。
つまり、単純労働作業の外注。企業が社内でやるにはあまりに発狂しそうな細かい大量の単純労働をビジネスコンビニに外注するわけですが、作業の1つひとつは単価が安くても法人系は大量発注系が多いので、割に合うのです。これがビジネスコンビニの生命線になっています。
割に合わない個人客
逆に個人の客は儲かりません。少数で単価が低いわりには細かいオーダーメード的な要望が多く、むしろ赤字になることも。
個人客はとんでもないオーダーが多く、例えば課題提出の締切に追われ切羽詰まった建築系の学生の図面などは糊でベタベタ、立体的な石みたいなものをA1やA2サイズの図面にベタベタ貼り付けてコピーを要望するので、高価なコピー機のスキャナーのガラスに傷を付けたりするのは日常茶飯事。コピー出力機のガラス交換に時間はかかるは、修理費は高いは・・・で。
以上のようにわけのわからないモノをコピーするので、店頭に置かれているセルフのコピー機も、その読み取り面のガラスは傷だらけですぐに交換しなければならなかったり、不適切な紙を持ち込んで詰まらせてコピー機を破壊するなど、個人客は割に合わない傾向さえあります。
昼間はこのような個人客の応対が主になるので、店舗運営は遅々として進まず、夜の時間帯を有効活用することになります。
時代の流れ
1990年代後半から出現して、拡大してきたそんな紙(アナログ)からデジタルへの移行の隙間産業のようなビジネスコンビニも、2005年頃をピークに、
- ペーパーレス化(デジタル化)
- 少子高齢化による需要の減少
- 競合他社の乱立
ふつうのコンビニしかり、24時間営業の業種は時代の最前線を走っているゆえに、時代の変化も感じ取れやすいので、見ていておもしろいものがあります。