前歴や微罪処分はESTAでアメリカ入国できる?

2020/05/25

アメリカ

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海外がらみの仕事をしていると、入国や税関、ビザ関連などいろいろな話題に触れることがあります。

先日、前歴(前科ではない)がある人はESTA申請すれば、アメリカに観光で入国できるのか、という話題に関わることがあったので、その時調べたことをメモしておきます。

まず、結論から書くと、前歴ある人は、事前にアメリカ大使館・領事館に問合せをして、それに従って、ESTAなりその他ビザを取るなどしたほうがよい、ということです。

ネット上には、「前歴あったけどESTAで無事、アメリカ旅行できた。」といった記述が散見しますが、いずれも2018年以前の古い情報で、今は事情が変わってきています。アメリカ入国に関しては、2019年より前の情報は、参考にしないほうがよいでしょう。

2019年1月~ PCSC協定

2019年の1月からPCSC協定という日米間で、指紋情報のシェアが始まりました。これにより、アメリカ側も、日本側が保有している指紋情報に簡単にアクセスできるようになりました。

内容についてはこちら

重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定
(略称:日・米重大犯罪防止対処協定)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000029769.pdf

に載っていますが、前歴や微罪処分に関連する部分は、最後の20ページ目の「附属書II」に、

但し微罪と認められた場合又は最終的に刑事手続以外の未成年者に関する手続の対象となった場合を除く。

と書かれています。

これを逆に言えば、「微罪」以外のものは、すべてアメリカ入国時の自動照会の対象になる、ということです。

不起訴になって前科にはならず「前歴で済んだ人」も、アメリカ入国時の指紋認証システムで引っかかってしまう可能性がある、ということになります。

「ええっ?ESTA申請ちゃんとしたのに、税関で拒否られるの?」

と感じてしまうかもしれませんが、ESTA申請というのは、ただ「アメリカ行きの便に乗れる」というだけで(ESTA自体はあくまで厳正なビザ審査ではない)、自己申告的なものにすぎないので、空港到着後から先のアメリカ入国が保証されるわけではなく、入国の可否はまた別問題となります。

これをまとめると

  • 微罪処分で済んだ人・・・おそらくESTAで入国できる(念のため米大使館・領事館に確認を)
  • 前歴ある人・・・ESTAで渡航しても指紋認証で引っかかる可能性があるので、ビザをちゃんと取ったほうがよい(念のため米大使館・領事館に要確認)
  • 前科ある人・・・事前にビザ取るしかない

といった感じになります。

年々厳しくなる一方のアメリカ

これは何も日本に限ったことではないらしく、イギリスからアメリカ入国に関しても、こんな記事がありました。

米国、前歴審査厳格化で入国拒否増える 2019/6/18
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46228050Y9A610C1000000/

アメリカが入国審査を厳しくしたので、英国のビジネス旅行者も過去の軽微な犯罪歴で入国できなくなった人が増加しているとのこと。

「逮捕歴」?

ちなみに、在日米国大使館・領事館のサイトに、

有罪判決を受けた人
https://jp.usembassy.gov/ja/visas-ja/faq-list-ja/criminal-convictions-ja/

というQ&Aページがあり、そこに、

私は過去に逮捕されたことがあります。ビザなしで渡米できますか?
いいえ。逮捕歴がある場合は、ビザ無しで渡米することはできません。あなたの渡米資格を判断するためには、ビザの申請が必要です。ビザ申請の際には、判決謄本・裁判記録・またはあなたの犯罪歴に関しての関連書類を全て提出しなければなりません。日本語の書類には英訳文が必要です。

といった案内がなされています。

この「逮捕歴」という表現もけっこう曖昧で、例えば、「逮捕」されなくても前科・前歴が付いた人もいるでしょうし、「逮捕」されたけど微罪処分で済んだ人もいるので、このQ&Aを一読すると、むしろ謎が深まってしまいます。(そもそも逃亡や証拠隠滅等の恐れがなければ「逮捕」はされないので、実際に犯罪を犯しても「逮捕」されないことは多いです。)

「判決謄本・裁判記録・またはあなたの犯罪歴に関しての関連書類」とあるので、おそらくこのQ&Aは、「逮捕歴」=「前科がある人」を想定しているものと思われます(前歴や微罪処分の人ではない)。

ただ、前科ではなく前歴で済んだ人も、前述の通り、今度は指紋照合のほうで引っかかってしまう可能性があるので、このQ&Aは安心材料にはならないでしょう。

アメリカのこうしたシステムは、基本的には「重大犯罪」を念頭に運営されているのですが、軽微な前歴者もとばっちりを受けているという感じですね。

入国カード

その他、アメリカ入国時に一般的に関わりがあるものとして、「入国カード」(I-94W 非移民査証免除出入国カード記入)がありますが、これには前科前歴に関係しそうな文言としては、

あなたは、規制薬物に関係した背徳的行為もしくは違反を伴う犯罪のかどで、逮捕されたこと、あるいは有罪と決定されたことがありますか?または、合計5年以上の実刑判決を伴う複数の犯罪のかどで、逮捕されたこと、あるいは有罪と決定されたことがありますか?または規制薬物の密輸人であったことがありますか?または犯罪的もしくは不道徳的な活動に従事するために入国しようとしていますか?

と尋ねられていて、それにYes/Noで答えるようになっています。こちらは専ら薬物や重大犯罪に主眼が置かれていますので、前歴の方はNoと記載することになります。

「~のかどで」がわかりにくい

ちなみに、この文面の「~のかどで」という表現が、日本では日常口語で一般的に使われていないので、非常にわかりにくい、と思いました。おそらく若い人は「~のかどで」ってなんじゃらほい?っと思ってしまうのではないでしょうか。

  • 「~のかどで」=「~により」「~のために」

と言い換えて読むとわかりやすくなると思います。

尚、この入国カードに1つでもYesがあると、入国拒否される可能性があります。

まとめ

以上から、アメリカに入国するには、何重にも越えなければならないハードルがあり、前科には至らない、前歴持ちなど微妙なラインにいる人は、いきなりESTA申請で何食わぬ顔でアメリカ入国をチャレンジするよりかは、

  1. アメリカ大使館・領事館に尋ねる
  2. それに従って事前にビザ取得しておいたほうが無難

という安全策を取ったほうが無難かと思われます。一度でも何かの弾みで入国拒否になろうものなら、二度と入国できなくなる可能性もあるので・・・。

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