コロナ禍で倒産・閉店・縮小の留学会社

2021/07/25

海外

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海外留学会社倒産

以前、海外を放浪していた身としては、このコロナ禍では、旅行代理店や留学エージェント(留学斡旋会社)の今現在が少し心配だったりします。

コロナ禍でも海外放浪者はいるらしい

先日、海外の会社とやりとりしていた際、このご時世でもワーキングホリデーなどで海外をプラプラしている変わり者の日本人は(数は激減ながらも)見かけるとのことでした。
しかし、例えば現在(2021年6月-7月)もオーストラリア・シドニーが突然ロックダウンしたように、突然、通学予定の現地語学学校に通えなくなったり、バイトできなくなったりで、ほとんど思うようには動けていないようです。

(経営が苦しい留学会社や旅行代理店は海外渡航をそそのかすかもしれませんが)当たり前ですが、今は海外渡航や海外留学は止めておいたほうがよい、というのが正直な感想です。

ワクチン打てばOK、とか自主隔離すればOK、といったレベルの話ではなく、また、新型コロナウィルスの直接の感染リスクだけでなく、アジア人に対する人種差別・暴力事件に突然巻き込まれるリスクその他、ありとあらゆる不測の事態が、どこの国でも起こりうるためです。

自己責任と言っても、結局、事後の処理には多額の税金が使われることが多いのです。

少なくとも私だったら、今は海外に行きません。

倒産・閉店した留学会社・語学学校

世間ではほぼ話題になっていませんが、コロナ禍で人知れず倒産(閉店)した留学会社はあるようです。

例1:東京の留学エージェント

例えば、東京にあった留学エージェント。この会社は北欧留学や韓国やアメリカでのNGOインターンシップ、社会福祉ボランティアなどを扱っていた留学会社ですが、2020年中は

出入国が制限されているため営業を休止しています
新型コロナウイルスの影響により申込受付を見合わせています。

との案内がずっとweb上で表示され実質「開店休業」状態が続いていたのですが、2021年3月頃を最後に、ホームページ自体が忽然と消えてしまいました。ドメイン(URL)も契約切れ、売りに出されてしまっており、完全に営業を終了してしまったようです。

事業終了の挨拶文や倒産(閉店)後の連絡先の掲示も見当たりませんが、登記上は「清算の結了等により登記記録が閉鎖(登記閉鎖」となっているので営業を終了したのは確実です。

小さな会社だったので、コロナ禍で参加者もほとんどいないかゼロだったので、被害者もおらず、いわゆる円満業務終了だったようですが、このようにコロナ禍で消えて行っている留学エージェントは確実に存在しています。

例2:海外の留学会社

では日本の留学会社だけが倒産のリスクにさらされているのか?というとそうではなく、海外はもっと枚挙にいとまがありません。特に海外については無数の現地留学エージェントが存在し、突然消えてもほとんどニュースにもならず、把握は困難です。

把握している一例としては、ニュージーランドの現地留学会社。ここは「新型コロナウイルスの影響により2020年5月31日(日)をもちまして現地オフィスを閉店することとなりました。 出入国制限が解除され再び留学業界に活況が戻りましたら、新たな体制での再開を検討したい」との案内を出しており、一応、円満閉店だったようです。

それ以外にも一応、営業は続けているものの、街中のオフィスからは撤退(閉店)して、自宅からリモートワークで運営している現地留学エージェント(つまり実質、存在はweb上のみ)も多くなっています。

例3:現地語学学校の倒産は数え切れず

留学会社はまだマシで、現地の語学学校の倒産(閉校)は国を問わず、すさまじいものがあります。

ちょっと検索しただけで、フィリピンだけでも数十校レベルで消滅しています。

昨年3月早々に、イギリス・ロンドンの語学学校も(前日までふつうに営業していたのに)突然、倒産したところがあるというブログ記事もあります。実際は消滅した語学学校はたくさんあるのでしょう。

日本の会社であれば、まだ日本の弁護士やらに相談できたり、社会ニュースとして取り上げてくれるだけマシですが、海外の会社や語学学校に直接申し込んだ場合は、現地で訴訟を起こすのも割に合わず、ニュースにもならず、泣き寝入りするしかないので、このご時世、海外留学はリスクが高いです。

ネット上では、「現地で直接申し込めば安くなるよ!」的な情報があふれてますが、現地直接申込みの場合、学校が突然消えたら、泣き寝入りするしかない(払ってしまった授業料回収は絶望的)という「安かろう悪かろう」のハイリスクがあります。

語学学校は、それほどインフラを必要としない簡易なオフィス賃貸と、外部からパートの講師を雇えば成立してしまうビジネスなので、突然ドロンしやすい構造があります。

生き残りそうな留学会社

留学会社は規模(大・中・小)に関係なく、倒産リスクはあります。

生き残れそうな留学エージェントは以下のA,B,Cを実践できているようなところです。

A.とにかく経費を掛けていない

当たり前ですが、毎月かかっている経費が限りなくゼロで、借金もゼロであれば、倒産リスクも限りなくゼロというか、つぶれようがありません。

経営に影響を与える主な経費は、
  1. 家賃
  2. 人件費
  3. 広告費
です。

逆に言えば、これらをチェックすれば、つぶれそうな会社/大丈夫な会社 の判断要素の1つにすることができます。

1.家賃

家賃が見合っていない会社は倒産します。コロナ禍のご時世、移転で規模縮小していない留学会社は逆に不安要素が増します。

駅前に広いオフィスを構えた留学会社だと、家賃だけで月数十万円~数百万円は発生しています。

収入(売上)があってもなくても、家賃は発生し続けるので、家賃が大きいところほど、コロナ禍のような打撃を受けると、倒れてしまいます。強風の中、帆を広げたままの船は、沈没してしまうのと同じです。

留学は、留学会社のオフィスが留学先なのではなく、本来、渡航先の海外が留学先なので、留学会社のオフィスがあまりにご立派すぎると、それは留学費用の中に占めるその会社の利益が不当に多い(つまり、ぼったくりである)ことを示唆している可能性があります。
別の資本(グループ企業など他の稼ぎ頭)から、お金が入ってきているから「オフィスが立派」なら良いのですが、そうでない場合は、自分の留学費用が適正かどうか、払った途端、倒産してしまうのではないか?を心配したほうがよいでしょう。

2.人件費

無駄にスタッフがたくさんいる留学会社も考えものです。例えば、担当したカウンセラーのほかに、航空券予約・発券用のスタッフが別にいたり・・・などです。

このコロナ禍で、リストラをうまく進められていない留学会社は、倒産リスクが高まります。

「お客さんはいないのに、なんかやたらスタッフがいるなぁ。」と感じたら、その留学会社は注意したほうがよいかもしれません。と言っても、スタッフが少なければ良い、というわけでもありません。その留学会社が運営しているプログラム数や取り扱いの国の数によって、適正な人数は変わってきます

3.広告費

広告費に莫大な予算をつぎ込んでいる会社も倒産リスクは高いです。

以前、旅行会社「てるみくらぶ」が倒産してニュースになりましたが、この会社の倒産理由の1つが、莫大な広告費でした。新聞に出した広告費などが最終的には倒産の引き金になったようです。

ではどこの会社が広告を出しているのか、その調べ方は、例えば、

  1. Gooogleで「留学」などのキーワードで検索した時に、検索結果の上下などに広告が表示される。
  2. 本屋さんに行って、旅行雑誌・留学雑誌を開いてみれば、広告を確認できます。例えば、その本の中で、広告面積が大きいほど、白黒でなくカラーであるほど、また表表紙・裏表紙に近い位置の広告であるほど、掲載費用は高くなります。

こうした広告露出が多い会社ほど、広告費にお金をたくさん使っている、ということになります。

広告イコール「悪」ではありませんが、広告が多いほど、あなたの留学費用にも広告代金が含まれている、ということになり、適正な価格なのかどうか、考えてみる必要があります。

特にこのコロナ禍では、広告費にお金を費やす余裕など、留学会社には本来ないはずですし、今、広告のような形で大体的に募ったところで、安定して送客できる国は少ないので、広告はむしろ逆効果になるはずであり、健全な経営がなされていない1つの目安になります。

B.収入源が分散化できている

以上が出ていくもの(経費)による、留学会社の判別方法ですが、入ってくるもの(収入源)も確認しておくとよいでしょう。

例えば、

  • 留学事業以外の資本がしっかりしているか
    (留学プログラム以外の収入源の分散化ができているか?)

をチェックすれば、安心材料は見えてきます。

具体的には、留学プログラム以外に、国内需要だけで賄えるようなビジネスや、コロナ禍では逆に追い風のオンラインや通信系のビジネスを元々展開しており実績があるとか、グループ企業の売上がよいなどです。一言で留学会社といっても、元は(もしくは親会社が)旅行本の出版社系であったり、旅行業系であったり、IT系であったりと様々です。

留学1本だけの会社で、しかも主要な送客先の国が1つだけだったりする会社ほど、厳しいものがあります。

その会社が得意としている留学先の国が、新型コロナウィルスの影響を受けていないか、またはコロナ禍が逆に追い風となるようなビジネス(例えばオンライン系の何か)を確立できているか、チェックしてみるとよいでしょう。

C.更新性がある

ライブ(生きている)会社は、ネット上での発信も活発です。例えばホームページ上、またはSNS等で毎日~少なくとも週1回程度以上は、何かしら更新をしているものです。ネットをうまく活用できているから、コロナ禍の影響も軽減できている、とも言えます。

逆に「死に体」の会社は、倒産前はweb上の更新がしばらく止まっていることが多いです。

「ネット上の更新性」も、経営の健全さの判断材料の1つにすることができます。

尋ねても無駄

よく「経営大丈夫ですか?」「お宅の会社、倒産しませんか?」といった短絡的な質問を直接、担当者にぶつける人がいますが、直接、当事者に尋ねても無駄です。特に窓口のカウンセラーなどの末端の社員は、経営の実情にはかかわっていないことが多いので、聞いたところで確たる答えは返ってきません。

それよりも、上述のように「最近いたカウンセラーが挨拶もなく突然消えた」とか(←これは倒産の気配)、「家賃が安そうなところにオフィスが移転した」「サテライトオフィスに移転した」(←リストラを進めている証拠。しかし立て続けにさらに安いところに移転したら経営危機かも?)といった外形的・客観的「事実」から、判断材料を得ることができますので、自分の目と頭でしっかり判断していく癖を付けたほうがよいです。

ただ、基本的には、前述の通り、現在の状況下での海外渡航はお勧めではありません。不測の要素が多すぎるためです。

その他注意:「労働マルチ商法」(フルコミッション制)

これはコロナ禍とは関係ありませんが、「ある商法」を駆使した、従業員の給料がフルコミッション制の留学会社も倒産リスクは高いです。

労働マルチ・フルコミッション制の遺伝子

以前倒産して多くの被害者を出し問題になった留学会社「ゲートウェイ21」もフルコミッション制の会社でした。ちなみにそれから間もなくして倒産した留学会社「S社」(●●●留学センター)も同じシステムです。

フルコミッション制とは、例えば、お客1人の申し込み獲得につき、その勧誘した社員の月の給料に10万円入る、といった制度です。

こうした会社では、経営のマニュアルが出来上がっており、お客1人の申し込み獲得を「ワン・イエス」(申し込む=イエスと言った)と呼び、ワン・イエス=10万円(例えば、客が払った90万円の留学費用のうち10万円がその勧誘した社員に配分される)。月10人獲得すれば、獲得者の月給は10人×10万円=100万円になる、というシステムです。一人も獲得できない無能な社員は給与ゼロ。すぐに消えていきますので、経営者は人を雇うことでのリスクはゼロです。いわゆる「労働マルチ」とも呼ばれている手法です。

こうした制度下では、お客さん=お金(10万円)にしか見えないので、そのお客さんに本当に適した留学進路をカウンセリングするどころか、とにかくなんでもかんでも申し込ませようとするところから、その会社の崩壊の序曲が始まります。

このシステム下では、経営者はある程度、お金を稼いだら、さっさとその事業を切り上げ、異業種に乗り換えて、また同じ商法で稼いでいく・・・尚、成績優秀者は独立しなければならず、独立させて上納させることで、総元締めの儲けは拡大していく・・・を繰り返していきます。

ホスト?ホステス?

また、こうしたフルコミッション制で生き残れる社員は、不思議と美男美女(特に美女)であることが多く(つまり営業は外見が命)、行くと留学会社というか、ちょっと美人過ぎる人たちがそろいすぎている(営業成績が優秀な人は結果として美人ばかり)・・・つまりクラブのホステスのような印象を受けるので、雰囲気から察することができます。

常時、社員募集中

前述のシステムでは、営業成績がいい人は高収入を得続けますが(そしてやがて独立させられますが)、無能な人は給与ゼロですぐ辞めていきますので、常に社員募集の広告を出している傾向があります。そして、実力主義なので、「誰でも入社できる」(採用基準が緩い)特徴があります。
結果を出さなければ給与ゼロなので、雇用側からすれば痛くもかゆくもありません。とりあえず雇ってみて、売り上げゼロなら自然と辞めていく・・・という環境なので、オフィスも「アットホーム」ではなく、どこか冷笑的なシビアな雰囲気が感じられます。

多業種へ飛び火

以前、消滅した英会話学校「LADO」も同じフルコミッション制で、こうした労働マルチの遺伝子は、いろいろな商売に形を変えながら転移し、今も脈々と受け継がれていっています。

マニュアルの印刷物が用意されており、入社時に1冊、渡されます。就職説明会の際にも、そのマニュアルに書かれている内容の一部を使って、勧誘されます。例えば「マズローの法則」(人間の欲求を三角形/ピラミッド状に5段階で表現したもの)などを使って啓蒙(洗脳)していくような形です。

この商法は、古くは百科事典の訪問販売から、輸入雑貨の訪問販売、英会話教材から留学商品、美容系まで有形・無形を問わず、いろいろな商品・サービス販売に、この商法は進出しています。売る商品が違うだけで、販売方法や経営スタイルはまったく同じです。

例えば本屋さんで勧誘している英会話スクールや、果物の訪問販売、ネイル,エステ,サロンといった美容系など。最近では流行りのダンススクールにも手を出しているようです。特に若者は無知で騙しやすいので、若者をターゲットにしたビジネスに展開していることが多いように見受けられます。後述しますが、ビル一棟がこの商法のサービス・お店で寄り集まり成り立っている場所が存在しており、そのビルを外から眺めると一目瞭然。フロアごとに違う種類のお店が入っており、この商法が今何に手を出しているのか、浮き沈みを確認できたりします。

フルコミッション制(=完全実力制)なので、経営者が「できない社員」の人件費を負担しなくて済み、パーッと広げて、パーッと撤収するようなビジネススタイルなので、一時消費ではなく、留学や英会話などサービスの消費に時間がかかる商品では、お客さんに犠牲者が出てしまうのです。

雰囲気が独特

こうした会社は、外見だけで、分かる人にはすぐに分かります。とにかくノリだけで乗り切ろうとしたり(例えばタメ口もその特徴の1つ)、前述のようにやたら美男美女(特に美女)が多く(会社員というよりホステスっぽい感じ)、朝一に行くと、どこかの新興宗教団体のような妙な啓蒙(洗脳)の朝礼(←マニュアルに書かれていることの再確認)をやっていたりするためです。つまり独特な雰囲気があるので、それを感じられる人は、こうした会社の罠や倒産リスクを回避することができます。

郵便ポスト

また、そうした会社の郵便ポストを見てみるのも参考材料になります。このフルコミッション制の遺伝子を持つ会社は、勧誘のための下請け会社(←独立させられた人)が複数ぶら下がっていることが多く、1つの郵便受けに複数の会社名が連なっていたり、同じビル内に同系の会社が寄せ集まっていたりする(同じ経営者が同じシステムで、異業種を複数運営している)ことから、判明することがあります。

この労働マルチ遺伝子を持つ会社は、現在では留学業界からはほぼ撤退はしていますが(と言っても、一部の小さな留学会社は残っている)、いまだに異業種には多数、存在しています。最近では前述のように、若者に流行りのダンススクールや、インバウンド外国人相手の日本語学校などにも手を出しつつあるようです。

何かと先行きが不透明すぎる現在、自分が買おうとする商品やサービスの提供元が、労働マルチ商法ではないか?を当たってみると判断材料の1つになることでしょう。

またどこかの会社が変な倒産の仕方をしたら労働マルチ商法に原因があったのかもしれませんので、その線で当たってみると倒産する会社に意外なつながり、共通する仕組みが見えてくるかもしれません。

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