第五波が過ぎ、コロナ禍はひとまず落ち着きを見せて久しい現在の日本ですが、スポーツジムの経営危機への負のスパイラル、倒産へのカウントダウンは続いています。
以前のコロナ禍でスポーツジム経営危機(値上げ・閉店)での「会費の値上げ」に続き、今回は「休館日の増加(2倍増加)」が発表されました。
休館日が2倍に増加
【2022年1月~】「休館日変更」のご案内
拝啓 時下の候、会員の皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は___をご愛顧賜り誠にありがとうございます。
さて、弊社は新型コロナウイルスの脅威のなか、フィットネス業界団体のガイドラインに基づき、ご利用の皆様のご協力のもと様々な対策を講じ営業を続けております。しかしながら、事業環境は引き続き厳しく、更なる合理化を図ることと併せ、施設の老朽化もすすみ故障や不具合も増えてきております。つきましては、今後も快適な施設環境を維持し、皆様に安心して快適なクラブライフをお送りいただくために、下記のクラブにおきましては休館日の変更をさせていただきたくご案内申し上げます。
これからも、地域に愛され、会員の皆様にご満足いただけるようクラブ運営に努めて参ります。
何卒、事情ご賢察の上、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
1.休館日の変更店舗
【現在】毎月 15日・30日
【変更】毎週 金曜日
とのことで、これまで月2日だった休館日(休業日)が、毎週金曜日が定休日となり月4日以上の休み・・・休業日が2倍以上に増えたにもかかわらず会費は値上がりしたままなので、事実上、会費をさらに値上げしたのと同等、ということになります。それ以外にもこのジムは年末年始やお盆休みなどをガッツリ取ります。
このスポーツジムは、規模はそれなりに大きいですが、近隣店舗は少ないため休館日の他店相互利用(代替利用)もしづらい上に、今回の休館日は、その近隣店舗も同日であるため、相互利用もできません。完全に利用者シャットアウト状態です。
月2日の休館日でも多いと感じていたのに、これが2倍増しとなると、実質、会費のさらなる値上げと同等でもあり、利便性も失われ、退会者がさらに増加するでしょう。
実際、チェックイン時にフロント前を通過するたびに、退会手続きをしている人を見かけることが多くなってきています。
総合スポーツジムほど苦境
このコロナ禍では、プールやスタジオ、サウナ、お風呂など何から何まである総合スポーツジムほど苦境に立たされており、逆に筋トレに絞った小さなスポーツジムのほうは、休みなく24時間いつでも通えることもあり盛況のようです。今回の休館日増加で、24時間年中無休のジムはさらに追い風になるでしょう。
大手の総合スポーツジムの弱点として、
- 小回りが利かない
- 維持費が高い
- 高齢者依存(→コロナで客離れ)
- 外国人依存(→コロナで消滅)
が挙げられます。
特に「1.小回りが利かない」については、上記の『「休館日変更」のご案内』の文章にも、この危機にもかかわらず、いまだに大手ならではの悠長な危機意識の薄さ、機動力の無さが表れています。
「更なる合理化を図ることと併せ」とあるにもかかわらず、無駄な人件費が相変わらず割かれており、例えば、無駄な館内放送が多い、という点が挙げられます。一例として、毎日終業前に、5分、10分おきに、その都度スタッフが「終業時間のお知らせ」的なことをマニュアルで館内放送するのですが、こうした定時・定型文の案内は、すべて自動でできるはずです。単純労働分野における機械化による人件費削減があまり進んでおらず、昭和後期か平成中期の経営体制のまま、運営がなされています。
その他、館内に無駄な張り紙が多すぎるのも人件費と経費の無駄であり、例えばその必要もないのに、いちいちすべての掲示物がラミネートされていたりします。以前は、毎月の休館日を、毎月いちいち刷り直してラミネートして掲示するような有様でした。
このスポーツジムの運営元の母体が、大手の鉄道会社なので、こんなご時世なのに、どこかとても悠長な雰囲気が上層部に漂っているように感じます。この小回りの利かなさは、いつも会員である一般ユーザーの会費値上げ等不利益に反映されてしまいます。
今回の休館日2倍増しで、さらなる客離れは進むことでしょう。すでにこれまで毎日のようにいたのに、見かけなくなった常連客が多数います。
休館日増加で失われる総合スポーツジムの優位性
この休館日増加が致命的な理由として、「総合」スポーツジムの優位性が失われる点があげられます。「総合」スポーツジムでは、最近巷に増加した小規模な24時間フィットネスジムにはない、大浴場やサウナなどの施設があり、それを毎日楽しみに来ている常連客が多くいます。ジムなどはむしろ「おまけ」で、お風呂やサウナが主目的な人もけっこう、多いのです。
「現代の銭湯・公衆浴場」という役割
つまり、スポーツジムの隠れた役割として、「現代の銭湯・公衆浴場」というものがあるのですが、休館日を増やした場合、その大きなジムならではの優位性は失われます。休館日を増やしても、休みの日の家賃は発生し続けるわけなので、本来なら24時間年中無休でまわしたほうが、利益は上がるはずです。それができない、となると、やはりよほど無駄な人件費が掛かり過ぎている、とみることもできます。
実際、前述の館内放送しかり、フロントに突っ立って手持無沙汰におしゃべりばかりしている無駄なスタッフがたくさんあふれている印象を受けますが、それがリストラできないのは、経営努力が足りない、上層部が大企業然としているからなのかもしれません。
以上、日本国内のスポーツジム、特に大手の総合スポーツジムは、この期に及んで崩壊に向かっている・・・という件でした。