大学時代、左肩を脱臼したことがあります。意外と簡単な方法で脱臼を治す(肩を元に戻す)ことができました。
以下、その時の体験談です。
肩が消えた
大学時代、サークルの仲間と体育館を借りて、フルコートのバスケットボールをやっていた時です。自分は元々、高校時代はバスケ部だったこともあり、そこそこ張り切ってプレイをしていました。リバウンドのボールを取ろうとゴール下でジャンプしたところ、空中で相手プレイヤーの肩に、自分の左脇(左肩)が乗っかるような形になってしまい、そのまますごい勢いとパワーで、肩を左後方に持っていかれてしまいました。
グキッという大きな音がしました。
着地した途端、立ってはいられたものの、肩に激痛が走ります。
自分の左肩を見てみると・・・肩が無くなっていました。肩があったところに何もなく、陥没しています。肩があるはずの場所の、目線の先には床が見えるのです。そして自分の左腕はどこに行ったのか?というと、左わき腹から突き出てブラーンと垂れ下がっている・・・という変な状況になっていました。
なんじゃこりゃ!?
とまずは驚きましたが、激痛がズンズン襲ってきます。自分がどんどん青ざめていくのを感じます。
呼吸しようとすると、あばら部分から突き出している肩の骨があばら骨と肺を圧迫して痛く、呼吸しにくい状態です。
「これは脱臼というものか?もしかしたら骨折もしてるかもしれない。」素人ながらも何となく「骨に何か起きた」と認識するくらいの「肩消失」状態でした。
右手で垂れ下がっている左腕を支えるようにすれば歩けるものの、上半身左側がズキンズキン痛みます。しかし骨折の痛みほどではありません。
私は以前、右足首をサッカー中に複雑骨折したことがありますが、その時は歩けないのはもちろんのこと、気絶しそうなほどの痛みでしたが、今回はそこまでは痛くないので、骨折とは違うかな、とは感じました。
初・救急車
その時の時間帯は夜の9時前で、だいたいどこの病院も閉まっている時間帯なので、友人が救急車を呼んでくれました。救急車に乗ったのはその時が初めてです。
が、自分の場合、横になると痛いので、救急車の中ではストレッチャーの上にずっと左腕を抱えて座ったまま、運ばれていきました。
病院到着・施術
1.レントゲンで脱臼判明
夜間対応してくれる救急病院に運ばれたあと、当番医師が対応してくれました。まずレントゲンを撮られ、脱臼だと診断されました。幸い、骨折等は無いようでした。
2.治療
そして治療室に運ばれ、ベッドに仰向けに「気をつけ」(きょうつけ)の状態のような感じで寝かされました。脱臼の治し方は何個か方法があるらしく、医者は「うーん、どうしようかなぁ(どの方法がいいかなぁ)」と思案しながら、
よし、じゃぁ、深呼吸をしながら、ゆーっくり左腕を上に上げていってください。「前へならえ」をするように。はい、ゆーっくり、ゆーっくり。」
と指示があり、医者の軽い補助を受けつつ、寝た状態で天井を見ながら、脱臼したほうの腕を、徐々に腰の位置から天井へ向かって、いわゆる「前へならえ!」をするように、ゆっくりゆっくり、ふーふー言いながら上げていくと・・・
ちょうど左腕が真上にさしかかり、指先が天井を向き腕が直角に上がったあたりで、
シュポッ!
という感じで(実際はグキッという音でしたが)、肩が元の位置に収納されました。
これまで味わったことも無い不思議な感覚でした。
特に医者が力技で押し入れたわけでもなく、麻酔を打ったり手術をしたわけでもなく、ただ自分で自分の力で腕を下から上へ「前へならえ」をしただけでした。
それでとりあえずの救急治療は終わりで、その後は、白い三角巾で左腕を固定して、「左腕を絶対に動かさないように。とにかく安静にするように。」との医者から指導を受け、その日は病院を後にしました。時刻はもうすぐ24時になろうとしていました。
ちなみに脱臼の治し方はいろいろあり、例えば、
- 座った状態で、医者が背後から腕を持って上に上げる。
- うつ伏せの状態で寝て、重りを持った手をベッドサイドから下にぶらんと下げる(自分とは真逆の方法)
予後
翌日、また病院にいって、レントゲンを撮り、異常がない(肩が正常な状態である)ことを確認。約2週間は三角巾をかけて「とにかく固定・安静が絶対条件。左腕-肩周辺は動かさないように。」とのことで、ひたすら左腕だけは「ウルトラマンのピグモン」みたいに肩は脇に付けて手先だけ動かすような安静生活を送り、肩周辺の筋肉や筋が定着するのを待ちました。
ここで動かしてしまうと、ちょっとした動きでまた簡単に脱臼し、永久に脱臼癖がついてしまうそうです。
左腕は指先だけ使うようにして、荷物など重い物はすべて右手で持つようにしました。お風呂などはふつうに入りましたが、頭を洗う時は左腕は上げないようにしていました。
それからしばらく(3週間ほど)テーピングと三角巾で腕を動かさないようにした結果、一応、医療上は「完治」(処置終了)ということになりました。
リハビリ(再発防止方法)
自分の場合は、通院してのリハビリテーションというのはありませんでしたが、個人的にリハビリ&再発防止に努め始めました。脱臼後、ふだん通りの生活のままではダメで、何らかの「対策」を施さないと「脱臼は一度すると、必ず再発する」からです。
「対策」とは、単純に筋トレのことです。
骨の周りの筋肉を鍛えて、少々の負荷がかかっても、肩が抜けないようにガッチリ筋肉で骨を梱包することが重要になります。肩の骨のまわりにがっちり筋肉の鎧をかぶせて外れなくするイメージです。
これをしないと、一度脱臼した部位は、例えば日常生活で、ちょっとした衝撃でスポっと抜けてしまうそうです。
二度目の再発をやってしまったらもう重症で、その後、三度目、四度目が必ず起きます。
一度 脱臼癖がついてしまった人は、テキスト類を持ったたけでも脱臼、ちょっとした転倒でも脱臼、寝返りうっただけで脱臼するようになってしまうようです。
そうなると、今度は手術をしなければならず、何十万円かかかってしまうことになります。
よって脱臼は2回目をいかに防ぐか(=脱臼癖になることの防止)が一番重要となります。
1.家庭内筋トレ開始
脱臼して2週間程度の固定期間が終了しても、これは完治ではありません。安静期間が終了しただけなので、ここからが本当に向けての「完治」への道の始まりです。まずは恐る恐る、身の回りの物を使って、徐々にゆっくり鍛えていくことを始めました。
例えば、
- 最初は1日30秒程度でもいいので、1kg程度のダンベル(なければ1000mlのペットボトルに水でも入れればいい)を持って、上下左右に動かすトレーニングを20回1セットをおこなう。
- その後は2kgのダンベル(2Lのペットボトルに水を入れればよい)に換えるなど、徐々に重さを増やしていきます。
最終的には、最低でも10kgの重さには耐えられるようにするのが当面の目標となります。
2.スポーツジムに通い始めた
私の場合、元々、日常生活で腕立て伏せや腹筋などはやってましたが、それでは不十分と感じたので、学生の身分ながら、スポーツジムに通い始めました。特にマシーンを使って、肩の可動域を増やすようなトレーニングをルーティンにしています。
例えば、どこのスポーツジムにも標準的に置いてある、ペクトラルフライ(pectoral fly)で、通常、肘を置くパットのところに手の平を置いて、チンパンジーのオモチャがシンバルを叩くようなイメージで、真横180度よりもさらに後方へ、左右の広背筋(背中の筋肉)が背骨の位置でくっつく310度くらいまで両腕を後方まで引いてから、前へ持っていく(引き付ける)ようにしています。
ウェート(重り)は最初は20~30kg程度以(片腕あたり負担10-15kg程)でやってましたが、ン十年経過した現在は80kg以上でやっています。
その他、「脱臼した時の状況(後方へ肩が引っ張られる)」のと反対方向へ引っ張る(つまり前へ戻す)筋肉を増強することに注意を払いながら筋トレメニューをこなしています。
結果、脱臼からン年以上経過しましたが、脱臼の再発はありません。
肩をグルグルまわしてもなんともありませんし、例えば自転車事故で吹っ飛んで両腕で全体重を支えるような事態に遭っても、脱臼はすることはありませんでした。
後遺症(違和感)は残る
脱臼の再発はしておらず、予防には成功しているのですが、完治してン十年経った今も、左肩の違和感は残っています。無傷の右肩とは感覚が違います。左肩には「昔、限界を超えて肩がどこかに行ったことがあるんですよ。」という古傷的な感覚はずっと残っており、やはり右肩よりかは弱いという感じはし続けています。
よく事件・事故で、『被害者は「全治〇ヶ月」とか「全治〇週間」の負傷』といった文言を耳にしますが、特に骨がらみの負傷は、例え医学上「全治」と片づけられても、被害者はその後も後遺症や違和感に苦しめられているんだろうな、ということを、事件・事故のニュースを見るたびに、肩の違和感とともに思い出されます。