ここ数年、一般のマンションの一室を会議室やパーティールーム、イベントスペースとして提供するサービスが流行っています。
これが民泊以上の問題を多発させるので、実際に「追い出した」体験談をメモしておきます。
マンション型貸会議室・レンタルルームとは
マンション型貸会議室・レンタルルームとは、一般のワンルームマンションなどを、会議室やイベントスペース、パーティールームなどと称して貸し出すことです。増えた背景
これが増えた背景としては、「不動産投資(不労所得)で稼ぎたい」という輩の抜け道的な手段となっているためです。意外な不動産投資の穴場!?「貸し会議室運営」儲かるシステムと注意点とは
https://o-uccino.com/front/articles/52671
ワンルームを貸し会議室に変えて稼ぐ――副業サラリーマンの知恵
http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20160111/Harbor_business_75971.html
上の記事には「おいしい話」しか書いていませんが、実際は問題多発の迷惑行為です。民泊で問題が多発し、利用を禁止するマンションが増えたのと同じことが起きています。
このマンション型貸会議室・イベントルームは、およそ以下のような仕組みになっています。
仕組み
一言でいうと、「又貸しビジネス」です。通常、賃貸ですと、
部屋の大家(貸主) → 部屋の借主(住む)
という関係ですが、このマンション型会議室の仕組みは、
部屋の大家(貸主) → 部屋の借主(住まない) → さらに不特定多数に時間貸しする
という構図になっています。
例えていうなら、
- 民泊・・・ホテル(又貸し)
- 貸し会議室・レンタルルーム・・・時間貸しラブホテル(又貸し)
違法の可能性も
この「又貸し」は、グレイというより、ブラック(違法)である可能性が高いです。契約違反になる 物件の賃貸借契約では、さまざまな規約が記載された契約書を交わしますが、民法上でも「又貸し」は禁止事項の一つとされていることを知っていますか?「賃貸人の同意の無い賃借権譲渡や転貸(又貸し)は出来ない(民法612条)」とあるように、又貸しは契約違反となるのです。大家(貸主)と、はたしてどこまで同意を得てやっているのか?怪しいところですが、後述するように近隣住民とのトラブルが多発するため、明らかにマンション型貸会議室・イベントルームは問題であり、迷惑行為と言えます。物件の資産価値も低下するので、大家にとってもマイナスになります。
https://offer.able.co.jp/oshieteagent/agreement/sublease/
多発したトラブルの具体例
私の場合、ある日突然、隣室がこの貸し会議室(イベントスペース)になってしまったことがありました。隣人が転居して数週間後でした。この貸し会議室(イベントスペース)になった途端、ありとあらゆるトラブルが多発したので、列挙していきます。
1.騒音・振動
まず最初に異変に気付いたのは、騒音と振動です。やたらと隣室のドアの開け閉めがうるさくなり(つまり不特定多数が出入りするため、普通の居住ではありえないくらいの開け閉めの量となり)、早朝から夜23時過ぎても騒いでいる声が壁越しに聞こえるようになりました。古いワンルームマンションなので防音もそれほどなっておらず、ちょっとした声は隣室まで筒抜け状態です。通常、ワンルームマンションは1名か2名の利用しか想定していないはずですが、そこに4,5人から最大12名くらいがギューギュー詰めになるので、声はもちろん、拍手、足音、壁の振動などすさまじいものがありました。
2,3週間は我慢していましたが、ある日、劇団の舞台に関するセミナー?演技指導?のようなものをやっていたようで、劇場や舞台で発する発声(大声)の練習のようなことをワンルーム内でやる者がいて、こちらもついにブチ切れました。
すぐに隣室を訪れ、静かにするように伝えました。その時はそれで済みましたが、次から次へと新しい利用者が大量に押し寄せては、好き勝手、暴れ放題にやっていきます。声や拍手、笑い声、奇声・歓声などの音以外にも、ドスンドスンという壁の振動も相当なものでした。ワンルームにしては大きすぎる机とイスでさらに狭くなった空間を、大人数が動き回るのもさらに問題を悪化させる要因でした。
注意に行くたびに、室内をチラ見して確認しましたが、案の定、壁のクロスは擦り切れ、穴が開いている箇所もありました。
別の日に注意にいって呆れたのは、いい年こいた大人(50歳前後くらい)の男女8人くらいが、6畳ほどのワンルーム内で、ハンカチ落としみたいなゲームをやって駆けずり回っていた時でした。この時はこちらもかなりどなりちらして注意しました。
2.不審者続出・治安悪化
不特定多数の大人数が隣室を利用するようになったので、ドアを開けるたびに、廊下に不審者がいるような状態です。部屋の予約時間になるまで大人数が狭い廊下にひしめき合って話していたり、タバコを吸ったり、やりたい放題です。前の時間の利用者が時間いっぱいまで利用していたり、時間オーバーしても出てこないこともあり、次の時間を予約した利用者グループとの小競り合いも廊下で展開します。管理者が現場にいないので、トラブルはすべて利用者間で処理しなければなりません。そのトバッチリは、関係のない他のマンション居住者に降りかかってきます。
例え静かであっても、何かしら人の気配を感じるので、ドアの覗き穴から覗いてみると、人の家の玄関の真ん前で、スマホ持ってうつむいてずっと直立している見知らぬ女性がいたりするのでホラー映画です。
ある時は深夜23時頃に、電波音と傍受した音声などが漏れるトランシーバーのような大きなアンテナが付いた物を持って、頻繁に部屋を出たり入ったりする怪しい男もいました。
さらに間違ってこちらの部屋をピンポンしてくる不審者が多発。中にはカタコト日本語で、「〇〇ニ 来マシタ~。〇〇ワ ココデスカ?」とか何やらセミナーにやってきたらしいことを告げる外国人もいました。
そして四六時中、ドッタンバッタン、乱暴なドアの開閉音と振動が続きます。だいたい多い時で、1日に3,4組が利用する(利用者が3,4回転する)ような感じで、民泊トラブルをはるかに超えたトラブル多発でした。
3.ゴミ
これだけ大人数が利用すると、当然、ゴミ問題も発生します。隣室内でのゴミ放置・不衛生はもちろんのこと(それは自業自得)、廊下へのゴミや吸い殻放置、そして1階の郵便受けの前の、郵便受けの入れられた不要なチラシ廃棄専用ゴミ箱に、ことごとく会議室・イベントルーム利用者がコンビニ袋に包まれたゴミなどを捨てていくので、1階玄関ロビーのゴミの散乱ぶりはすごいものがあります。
一応、貸し室内には「ゴミは持ち帰ってください」という張り紙は貼っているようですが、そんなものまったく効果はありません。
会議室・イベントルームが巣食ったマンションやビルのゴミの散乱具合は悲惨なものがあります。
こうしたイベントルームの利用者の声として、以下のようなものがネットで確認できます。
- テーブル椅子がベトベトに汚れており、アルコールシートで拭かないと使えたものではなかった。
- 床にも食べ物のカスが落ちていた。流しの水を流したら排水溝からコバエが飛び出して来た。
- 冷蔵庫が使えなかった。冷蔵庫を開けたらコバエが出てきた。
- クッションやスリッパが汚かった。床やイスは前の利用者の抜け毛だらけだった。
4.異臭
異臭もすごいものがあります。大人数がせまい空間に密集するので、窓越しに、集団が発するむぁ~んとした排気や熱気、加齢臭、女性集団特有のきつい香水が相互作用した強烈な臭いなどが漂ってきます。ある時は、アロマテラピーの講習みたいなことをやっていたのか、強烈なお香臭が窓の外、そして廊下に漂っていました。
またある時は、何やらネイル教室のようなものをやっていたようで、シンナーのような強烈な異臭が漂ってきたことがあります。それらの臭いは数日、消えませんでした。
また、禁煙なのに、窓越しやベランダでタバコを吸う輩は日常茶飯事です。
5.無施錠・暗証番号ばら撒き
こうした会議室・イベントルームは、無施錠であったり、玄関にキーボックスを置いていたり、郵便ポスト内に鍵を置いていたりするので、つまり、一度でもこの部屋を利用したことがある人は、その気になれば予約なしでも使い放題、ということになります。予約状況は、第三者であるこちらもネットで確認できますが、明らかに予約が入っていない時間帯に、不審者がその部屋を使っていることもありました。また、朝まで不審者が使い続けているケースもありました。管理者によるチェックがまったくなされていません。
さらに最悪なのが、マンションの玄関はオートロックになっているのですが、この会議室・イベントルームを予約すると、会議室管理者が、予約者にそのオートロックの暗証番号をメールで通知してしまうので、不特定多数が簡単にマンションに出入りできるようになってしまいます。会議室利用者が、さらに連れの利用者に暗証番号を拡散させるので、セキュリティを崩壊させます。
6.廊下など共有スペースの占拠・生活妨害
ある時は、ヨガ教室のようなものを開くので邪魔なのか、その部屋に設置してある机やイスすべてを、廊下やエレベーター前に出した輩もいました。こちらの出入りに支障が出ますし、完全に他者の生活妨害・営業妨害行為です。「〇〇セミナー 開催中!会場はここ!」といった案内版やポスターを、マンション内のあちこちに置いたり貼ったりして、それを撤収しないでそのまま放置して消えていった利用者もいました。
非常階段にヤンキー座りして、タバコ吹かしながら、長時間 くっちゃべってる若者も日常茶飯事となります。灰皿は敷かれた水が枯渇し、灰皿の機能を失うほど吸い殻であふれかえります。
7.エレベーターがなかなか利用できない
大人数が利用するため、この会議室利用者がエレベーターを独占し、他のマンション住人がエレベーターを利用しようとしても、なかなかエレベーターがやってこない、という問題も発生します。この部屋利用者全員が同じエレベーターに乗ろうとするため、全員がそろうまで、エレベーターを止めたままにするからです。
また、大人数でエレベーターの定員を占拠するため、途中の階から他の住人が乗ろうとしても乗れない、という問題も多発します。
乗れたとしても、エレベーター内でも大人数が会話し続けるので、乗り合わせた第三者はとても迷惑な環境となります。
とにかくこの「又貸し部屋」利用者がやることなすこと、問題だらけです。
8.客層が悪い
この「又貸し部屋」は、時間帯によって1時間100円で貸し出されています。また、高い時間帯でも1時間2000円程度だったりするので、一般の「まともな」会議室よりも「格安」「低価格」をうたって集客しています。つまり、「安かろう悪かろう」で、こうしたスペースを利用とする者は、総じて客層が悪いです。若者がハメを外して大騒ぎや良からぬことをするためにこの「又貸し部屋」を利用する、というパターンが一番多いですが、怪しい啓蒙セミナー的なもの、新興宗教的な集まりなどにも利用されます。
9.犯罪にも悪用される
この「又貸し部屋」ですが、マンションタイプなので、事情を知らない第三者から見れば、利用者は居住しているようにも見えます。つまり、予めその部屋を数時間予約してその部屋にいれば、時間指定した郵便物や宅配物を、あたかも「居住者であるように偽装して」受け取ることができてしまいます。例えば、特殊詐欺で現金などをこの部屋に送らせ、受け取り、逃げる、ということもできるわけです。
部屋を予約する際に、偽名にして、前払いの室料は銀行振り込みにしておけば、足が付きにくくなります。
ラブホテルと違ってまったく出入りが管理されていないので、集団暴行のようなことも発生しやすい環境です。
また、前述のように無施錠だったり、鍵をシェアしているので、時間外でも使おうと思えば使えてしまうので、あらゆる犯罪の現場にもなりえてしまう、とにかく問題だらけのマンション型貸会議室・イベントルームというブラック・ビジネスです。いずれ大きな事件が発生し、社会問題化することでしょう。
管理者が現場にいない無法地帯
上記の問題は、いずれも一般的なマンションの利用規約違反に該当します。これらのトラブルの根源にあるのは、管理者が現場にいない、という点です。管理者とは「又貸しして一番利益を得ている借主」のことですが、この「又貸ししている借主」は、現場に立ち会って部屋の利用者や利用状況をチェックしたりしません。予約・支払い等はすべてネット上で完結させるので、現場にはノータッチです。
たまに(週に1,2回程度)部屋に来て見回りと簡単な清掃をする程度で、その見回り・清掃も外部に委託している場合も多いです。
そのため、部屋の利用者が引き起こすトラブルは、すべて近隣住民が被り、直接、対処しなければならなくなります。
立ち退かせる方法
あまりにひどい状況で、こちらの生活が脅かされ続けたので、退去させる方向で、こちらも動き始めました。最終目標は「最低でも隣室の退去」であり、かつマンションの利用規約で、民泊同様、「会議室・イベントスペースでの利用」を禁止または制限すること、です。
とにかくまずは証拠集め
とにかくまずは、この酷い状況が第三者にも記録として客観的にわかるようにすることが大切なので、証拠集め・記録収集に努めることにしました。具体的には、
- 廊下など共有スペースに置いた物やゴミの撮影
- 不審者の撮影
- 騒音を録音・撮影(スマホより集音性に長けるボイスレコーダーなども使用)
- 何時何分にどういったことがあったかを逐一、メモする
などを行っていきました。
コツコツと注意し続ける
その一方で、入れ替わり立ち代わりやってくる問題の利用者には「静かにするよう」直接出向いて忍耐強く注意し続けました。毎回、利用者が異なるので骨が折れる作業です。ただ、これについては、相手が刃物など危険物を持っていたり、逆切れされて放火などをされる危険性もありますので、相手を見定めながら、慎重かつ丁寧にやっていく必要があります。注意するときは、できるだけ感情的にならず、「マンションの利用規約の何条の何に違反しているので、静かにしてください。」という感じで、淡々と処理していくのがポイントです。
注意しながら、同時に どういった利用主旨で、その利用者名などの情報収集もし、記録していきました。
斡旋会社(ネットの予約会社)に連絡してみる
そうした証拠集めとともに、一応、筋として、この会議室・イベントスペースを斡旋(ネット上で広告・集客・予約受付・利用料徴収)している会社にも、一連のトラブルを報告しました。斡旋会社(部屋の予約システムを扱っている会社)は、インターネットで、「該当マンション名」や「住所」と、「会議室」「イベントスペース」「レンタルルーム」などのキーワードを組み合わせて検索すれば調べることができます。画像がたくさん掲載されているので、すぐにどのページがどの部屋か、特定させることができるでしょう。
ちなみに隣室の場合は、「スペース」を文字った会社名(サイト名)が運営していました。しかし、この斡旋会社がこれまた曲者で、何度報告しても「責任者は他にいる」「物件を管理しているのはここではない。その物件のオーナーは別にいる。」といって責任転嫁で逃げまくります。
では、「その責任者(部屋を又貸ししている張本人)に伝えてほしい」と頼むと、「はい、わかりました。」とは言うものの、後でまったく伝えていないことが判明しました。
この斡旋会社は、ベンチャー企業によくいがちな、パソコンがちょっといじれる(ネット上で予約サイトが作れる)20歳台、30歳台の無責任なオニーチャンたちが意気揚々とやっており、まったく埒が明きません。
斡旋会社への掛け合いは時間と労力の無駄なので、やはりこちら側で「強制退去」を目指してどんどん動き続けることにしました。
マンションの管理会社(管理組合)に通知
証拠がいろいろそろってきたので、写真や日時などをまとめて文書化したものをプリントアウトして、まずマンションの管理会社(管理組合)に書類で提出しました。しかし、マンションの管理会社(管理組合)は、昭和なお爺さん的な人が多く、対応に時間がかかるようでした。不動産会社に相談
次に、不動産会社(私の部屋の入居や更新する際にお世話になっている不動産屋)にこの話をしたところ、たまたま隣室もこの不動産会社の取り扱い物件で、不動産会社経由で、問題の「又貸し賃借人」に連絡を取ってくれ、ようやくこちらからのクレームを「又貸し問題人」に伝えることができました。不動産会社から話が伝わり、後日、この「又貸し賃借人」が、私の元に謝罪にやってきましたが(先述の斡旋会社が、こちらからの伝言を、この「又貸し問題人」にまったく伝えていないこともこの時発覚)、こちらからは数々の問題行動の証拠を見せ、マンションの利用規約違反であること、そしてマンションの管理会社(管理組合)にも同じ証拠書類を提出してあることを伝えました。
結果として、その「又貸し賃借人」は隣室から退去していき、ひとまず隣室については解決しました。
しかし、このマンションには別のフロアに、別の「又貸し賃借人」がやっている貸し会議室・イベントルームがあり、各フロアで問題が起きているようでした。
結果として、後日、マンションの管理会社(管理組合)から、以下のような規約の注意事項がマンション入り口に掲示されました。
貸会議室の利用使用に関する使用細則規定
- 貸会議室の利用使用に対して、区分所有者及び占有者外が全て責任を持って対応処理する事。
- 隣接する事務所、店舗等に御迷惑をかけない事。
- 建物の共有部分(通路、階段、エレベーター等々)に対する破損等の違法行為を一切、禁止します。
- 建物内の共有部分(通路、階段、エレベーター等々)でアルコール類の飲食行為とタバコ等の喫煙行為を一切、禁止します。
- 建物内において大声で話したり、エントランス等で待ち合わせの為に大勢でたむろして、他の入館者に迷惑を掛ける行為を禁止します。
- 建物共有部分(出入口ドア等と共有部分通路等)に掲示物を貼ったり、掲示物等を立て掛ける事を禁止する。
- 貸会議室を利用使用後のゴミ等は持ち帰って処分する事。
- 貸会議室の利用使用の時間を22時までとする事。
- 1階の案内板及び住戸扉横のアクリル板に貸会議室と明記する事
この規約を掲示さえすれば、すぐ問題解決するのか?というと決してそういうわけでもありませんが、これを盾に、さらに退去させやすくはなります。
さらに問題が発生し続ければ、最終的には、民泊同様、マンションの貸会議室・イベントルーム利用も禁止になることでしょう。
マンション型貸会議室・イベントルームは、他の居住者にとっては、良いことは1つもありません。マンション型貸会議室・イベントルーム利用者は、他の居住者・テナントから、白い目で見られていることを知っておいたほうがよいです。
以上、とりあえず喫緊の課題であった、隣室から「マンション型貸会議室・イベントルーム」を退去させた実体験でした。
最近、この手のブラックな「又貸しビジネス」が流行っているので、迷惑をこうむっている方の参考になれば幸いです。